自社に必要な人材に選ばれる企業になるため、昨今では「採用マーケティング」という考え方が重要視されています。この記事では、そもそも「採用マーケティング」とは?といったところから実際にどのような行程を踏んでいけばよいのかといったところまでをご紹介させていただきます。
現状の採用活動をアップデートするためにも、「採用マーケティング」の考え方を取り入れ、自社のターゲットとなる候補者に認知してもらい、ファンになってもらうための仕掛け作りをしましょう。
▼採用マーケティングとは
「採用マーケティング」とは、マーケティングの概念を採用活動に適用した考え方のことを指します。採用ターゲットの認知獲得や志望度醸成のために、求める情報を解明し、提供するといったような方法で実行していきます。人材獲得競争が激化している昨今、現状を打破するための新たな採用の考え方として注目されています。
また、新型コロナウイルスの流行に伴い採用活動のオンライン化が加速したことで、より採用マーケティングが実施しやすい環境になってきているとも言えます。これはオンライン化によって、Googleアナリティクス等を活用して採用ターゲットの行動履歴データの獲得がしやすくなったことが背景にあります。採用マーケティングの考え方を実行するためには、データを活用して採用ターゲットのニーズを把握し、それをもとに採用活動を見直すというようなPDCAをまわしていく必要があります。
では、実際にマーケティング活動のやり方に沿って採用マーケティングについてより詳しくご説明していきます。
認知(潜在層=転職潜在層・就職活動前の学生)
認知段階では、就職・転職意思の有無に関わらず、自社のターゲットに会社を知ってもらうことを目指します。入社意思のない段階から会社を知ってもらうことで、本格的に就職活動(転職活動)を始めた際の候補に入りやすくなるのです。
この段階では、あくまで潜在層をターゲットにしているので、FacebookやTwitterといったようなSNS等での情報発信、イベント出展などで、まだ求職活動をしていない人と接触できる手法が効果的です。
興味(顕在層=転職顕在層・就職活動生)
興味段階では、実際に就職(転職)活動をしている求職者がターゲットになります。働く場所としての魅力を発信することにより、就職・転職先として興味を持ってもらいます。具体的には、求人媒体やエージェントの活用はもちろん、SNSや自社採用サイト、会社説明会の開催を通して、自社の求人内容や組織風土などの企業情報の発信をしていきます。
比較・検討
比較・検討段階では、自社の選考を受けてくれた候補者に対し、魅力付けや採用競合との差別化を図り、その他の採用競合の中から選んでもらうための施策を打ちます。
新卒・中途問わず、求職者は複数の会社を並行して選考を受けています。実際に、2021年卒の学生に至っては、4人に1人が複数社に内定承諾し、内定式後に入社企業を決定するというデータもあるので※1、選考過程でいかに入社意向を高めるかが重要になります。
そのために、現場社員との面談でやオフィス見学の機会を設けるなどして、職場の様子や具体的な仕事内容、キャリアパス、一緒に働く社員の人柄を知ってもらい、入社後の活躍イメージを沸かせてあげられるようにしていきます。
決定
最終段階では、自社の求める人材に内定を承諾してもらい、就職・転職先として選ばれることが最終段階の目的です。この段階の目標は「入社したい」と思わってもらうこと。つまり採用候補者に、内定を承諾してもらい、最終的な転職・就職先として選ばれることにあります。
個人に合わせた情報提供を心がけ、候補者の懸念点を取り除き納得して入社してもらえるように内定者フォローを行いましょう。
※1 株式会社MyRefer
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000041.000036924.html
▼なぜ取り組まれ始めているのか
従来の採用活動は「応募してくれた人の中から選ぶ」ことが普通でした。ただし、売り手市場の採用マーケットの中で、顕在層だけを狙うこの手法のみでは、優秀な人材の獲得が難しいのが現状です。そこで注目され始めたのが、転職潜在層・就職活動前の学生もターゲットにした採用戦略です。
採用競争の激化
労働人口減少はこれまでも指摘されてきた事ですが、2020年は新型コロナウイルスの流行もあって例年以上に優秀層の人材獲得競争が激化しています。自社に必要な人材を獲得するためには、転職潜在層を含めた戦略的アプローチが必要なのです。
価値観・採用手法の多様化
人材を獲得するための難易度が高まる中、求職者の価値観も多様化し、それに伴い採用手法も多様化しています。従来は就活サイトや転職サイトを利用した応募が一般的でしたが、SNSやイベントを通して求職者に直接アプローチをするダイレクトリクルーティングやリファラル採用などの手法も登場しています。それぞれの候補者が重視する点について理解した上で、採用手法を選択し、自社の魅力をコミュニケーションしていく必要があります。
▼採用マーケティングを行うメリット
それでは、採用マーケティングの考え方を取り入れることでどのようなメリットがあるのでしょうか?3つのポイントに絞ってお伝えいたします。
〇コスト管理がしやすく低コスト化をはかることができる
経路ごとの実績やコストをしっかりとデータ管理する必要があるので、結果的にコスト管理がしやすくなります。また、ターゲティングしたうえで適切なチャネルを活用してアプローチしていくため、人材の定着率向上や採用広告費の削減が見込め、低コスト化を図ることができます。
〇入社後の活躍まで見通したマッチングができる
採用ターゲットやペルソナ設定をする際に、自社で定着、活躍する人材はどのような人物か明確にすることで、ミスマッチの少ない採用活動が可能になります。これに加えて、自社の魅力やリアルをしっかりと知ってもらうことで、採用した人材の早期離職も起こりにくくなり、入社後の活躍まで見通したマッチングを可能にします。
〇他社に負けない採用戦略を描くことができる
「どのような企業が採用競合となるのか」「採用競合はどのような採用活動をしているのか」等を考慮しながら採用活動の戦略を練っていく必要があります。さらに、自社の魅力を採用ターゲットの求めるタイミングで示していく仕組み作りができるので結果として他社に負けない採用戦略を描くことができます。
▼採用マーケティングを行うための流れ
それでは、実際にどのような段取りで採用マーケティングを行えばよいのでしょうか?
〇採用のターゲットの見直し
まずはじめに、採用ターゲットの見直しをしていきます。
ただし、求める人物像といったざっくりとしたものではなく、マーケティングにおける「ペルソナ」(マーケティング用語で、理想の顧客像のこと)を意識して、実際に存在しそうな一人の人間として設定していきます。社内で高い業績やパフォーマンスを上げている人材を分析し、自社の採用戦略に基づいたペルソナを設定すると良いでしょう。
採用したいターゲットをより明確化し、実在する一人の人物をイメージして行動や思考を分析することで、その人物を採用するための採用手法が考えやすくなります。
〇ターゲット層への訴求
採用ターゲットの段階(認知段階・興味段階・比較検討段階)に合わせて最適なチャネルを選択していきます。
どのチャネルにどの段階の候補者が存在するのか想定したうえで選定しましょう。
そして、採用競合等を調査し、自社の魅力や他社との差別化ポイントを明確にします。
必要な人材と会社の特徴でマッチするポイントを見つけ、そのマッチする人物がよく利用する媒体にターゲティングした内容の広告を出していきます。
例えば、採用競合の企業が運用している「オウンドメディア」や各社の「コーポレートサイト」、「個人ブログ」などに対し、「リスティング広告」「DSP広告」を運用するといったやり方です。どちらも欲しい人材をターゲティングして表示させる広告なので、広告費の無駄を防ぐことができるようにもなります。
その他にも、facebookやWantedly等の活用による直接接点やindeedやGoogle for Jobs等の求人クローラーなどさまざまなチャネルが考えられるため、競合調査とターゲットに合わせたチャネル選定は非常に重要です。
〇選考段階での魅力付け
候補者は選考を通して志望度を上げていきます。よって、候補者一人ひとりに合わせたコミュニケーション手段を選択し、候補者の欲している情報を必要なタイミングで提供する必要があります。
有効な手段としては、選考段階でアンケート等を実施することによって、採用候補者から情報収集をし、候補者の求めるタイミングで求める情報を最適な手段で発信することで企業理解を深め、自社の志望度醸成につなげることができます。
〇エントリーから内定までの分析
採用マーケティングを実施するには、データの蓄積・分析による採用活動の効率化も状うようです。
下記の2種類の項目で分析をしていくことをお勧めしています。
①数値的な分析
各プロセスの推移やエントリー経路別の分析など数値で確認できる情報を分析します
採用活動全体の経年比較分析
エントリー数、説明会参加数、内定数、内定承諾数、入社数などで比較することで、採用活動全体の変化をつかむことができます。
歩留まり分析
エントリ-、説明会予約、説明会参加、面接、内定出し、内定承諾、内定辞退などのプロセスを全体、職種別、エリア別、時期で分析し、採用活動のボトルネックを発見します。
応募経路分析
ナビサイト、イベント、インターンシップ、自社の採用ホームページ、大学の就職課、ダイレクトリクルーティング、リファラルなどそれぞれのエントリー経路別でのエントリー数や移行率を分析し、次年度以降どのエントリー経路に予算を投下すべきか判断することができます。
②実質的な分析
数値的な分析からは読み取れないような傾向をアンケートやヒアリングから分析します
応募動機の傾向分析
候補者の応募動機を分析することで、自社の魅力や説明会での訴求ポイントを具体的に把握することができます。ⅲと組み合わせると、前年の内定承諾者の多くが挙げていた応募動機と似た傾向を持つ候補者には優先度を上げてアプローチするなど採用戦略を立てやすくなります。
説明会での質問分析
候補者からの質問を分析することで、説明会や選考で魅力訴求できていなかった点や本当に知りたい情報を知ることができ、その後の選考の改善につなげることができます。
内定承諾/辞退者分析
内定承諾者と内定辞退者の傾向を自社で把握しておくことで、自社とマッチしやすい人物像を把握できます。
▼まとめ
採用マーケティングは、自社に必要な人材に選ばれるために必須の考え方。
入社してほしい人材を明確化し、企業側から積極的にアプローチし、入社してもらうための攻めの採用戦略ともいえます。採用活動のアップデートのため、是非採用マーケティングの考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか?